萩萩日記

世界に5人くらい存在するかもしれない僕のファンとドッペルゲンガーに送る日記

コンテンポラリーピアニズム

というコンサートを観に行きました。立川市女性総合センターってところまで。現代音楽のピアノのコンサート。なんと無料。

で、これが、ものすごーく面白かった。

ドアタマ、このコンサートを企画したなんとかって会の人が「現代音楽というとみなさんお聴きになられたことがないかもしれませんが」的な話から始まり、「常識を疑うという意味で、ジェンダー問題に取り組んでいる私たちと」みたいな話につながり、非常にチープだし鬱陶しかったんで、一番前の席に座ってたんだけど帰りそうになった。が、今回はシュトックハウゼンピアノ曲を聴きたかったので、じっと我慢。

今回演奏されたのは中村和枝さんという人で、この人と作曲家の山本裕之さんて人がクラヴィアーレアというユニット(?)をやってるらしく、山本さんは曲間に解説みたいなのをしてくれた。今日のコンサートは演奏も良かったけど、この山本さんの解説も良かったんだよね。変な現代音楽臭とか哲学臭とかなくて。まあ、実作者は、案外そういうもんだと思うけどね。

以下、すこし感想。

ハインツ・ホリガー/エリス

「現代音楽」って感じのピアノ曲。痙攣したみたいな感じとでも言うんですかね。しゃっくりみたいに、急にffffffで弾くみたいな。まあ、普通に面白かった。

カールハインツ・シュトックハウゼン/ピアノ曲V

これも「現代音楽」って感じ。トータルセリエリズムのころの作品のようで。ちょっと、正直期待外れではある。が、今回「コンテンポラリー」と題してるけどこの曲って1955年とかなんだよねー。どこがコンテンポラリーなんだか。と思ったけど、ちゃんと今年作曲された曲とかもやってたのが、このコンサートの素敵なところだったよ。

ちなみにシュトックハウゼンピアノ曲で、ミトン(手袋ね)をはめて演奏するやつあんだよねー。聴いてみたいなー。

トリスタン・ミュライユ/河口

ここまでは、まあ普通に楽しいコンサートだったんだけど、ここからがすごかった。

ミュライユのこの曲、あとで調べたらCDを持ってて、当然iPodにも入ってるから何度も聴いてたんだけど、こんなに良い曲だったとは、と。激しいんだけど優しくもあり、現代音楽だから、いわゆる普通の「ピアノ曲」からするととんでもないところに手が移動したりするんだけど、スペクトル楽派だからかどうか、無茶苦茶弾いてるように見えて、全然、変に濁った音にならないんだよなー。

でも、素敵だったと思えるのは、ひとつには、一番前の席に座って、運指がちゃんと見える場所にいたからかも。ライブの特権だよねえ。

山本裕之/月の役割

クラヴィアーレアの相方の山本さんの曲。

右手と左手は決して同時に音を出すことはない。音響は当然薄くなるが、それと同時に私がいつも興味を持っている「音の曖昧さ」を、トリルやペダルの多用によって作り出している。

って書いてあった。パンプに。そんなにすごく曖昧ってことはなかったようだけど、音響派っぽい感じではあるのかなあ。美メロとかの方向ではなく、音を雲として聴かせるみたいな。まあ、それ言ったら、現代音楽のピアノ曲って、そういうのが多いような気もするけど。

この曲は、なんか右手と左手の対比というか協調というか、それが面白かった。

ジェラール・ペソン/光は我らを支える力を持たない

出ましたって感じの曲。

グリッサンドを多用したワルツっぽい曲なんだけど、そのグリッサンドが、音を出すグリッサンドではなくて、指が鍵盤をこする音が使用されてるの。ま、一発ネタだよね(笑)。こういうのがあるから現代音楽は楽しい。あほっぽくて。で、わりと素敵だなあと思ったのは、この曲が終わったあと、ちゃんと会場から笑いが起きたこと。

良かった良かった。

成本理香/TRACE II: Three Curved Lines for piano

この曲では作曲者自身が壇上で簡単な解説をしてくれた。リハで、曲を少しカットしたりしたらしい。

曲自体は、三味線浄瑠璃音楽の「一中節」ってやつを分析してグラフ化して、それを元に曲にしたらしい。

2行連続で「らしい」で終わってしまった。どうでもいいけど。

で。

ちょっと期待したんだけど、あんまり、わかんなかったかな。でも、カンなんだけど、聴き込めば面白くなりそうな気がする。「ズレ」がテーマのひとつっぽいから。

今日MC(とは呼ばないか)で言ってたんだけど、12月4日にトッパンホールで、この曲と同じグラフを使っているけど違うアプローチで作った室内楽曲が演奏されるらしく、ちょっと興味あり。でも4,000円かあ。

うーん。

悩まし毛。

塩見允枝子/「フラクタル・フリーク」より第2番「鏡の回廊」

フラクタルピアノ曲といえば、古川聖のMusic by Numbers 数による音楽がわりと好きで、さて、この曲はどんなもんかなと思ってたら、これまた良かった。「鏡」がタイトルに入ってるだけあって、執拗な逆行フレーズがたくさん出てきて、両手の動きが面白かった。

で、これ書きながら、この曲だったか、ひとつ前の「TRACE II」だったか忘れたけど、高い方の鍵盤を、ありえないぐらい強力に連打して、連打し終わったあとに出る共鳴の音を聴かせるみたいなネタがあり、なかなか面白かった。あと、低い方の音がぶつかっても、ピアノってうなりが発生しないのかなあとか思った。違う?倍音が多いからそうなのかなとか思ったんだが。

と、こんな感じの素敵なコンサートだった。

最後にピアノの中村さんが簡単なあいさつをしてて、その中で、昔は自分も「現代音楽だ」と気負って演奏していた時期もあったけれど、いまは現代を生きる人間として、現代に生まれる音楽に対して、新しいお洋服を見に行くように、楽しく触れられたらいいな的なことを言っていて、なんか良いなと思った。こういう演奏家に演奏してもらえる作曲家は幸せ者だと思います。

ひとつだけ。

シャリーノも聴きたかった。