なんか久しぶりの「設定もの」のような気がする。嬉しい。やはり僕は、西澤保彦は『七回死んだ男 (講談社文庫)』とか『人格転移の殺人 (講談社文庫)』とか、そういった系が好きなのだ。「ばっちりと奇妙な設定が用意された中で論理的にものごとが解決する」という、なんだろう、脳味噌がシビれる感じのするものとでも言うか、「ありえねー」って言いながらニヤニヤと楽しむと言うか。
監視カメラが自分たちを見守る中、初めてあった女性と少女とともに「家族」を演じる主人公。
本のあらすじを読んだときには、待望の「設定もの」かと思ったのだけど。
僕の好きな西澤保彦の、裏返しにしたような作品だと思った。いつもならば最初に「なんでそうなるかは聞かないでね」という設定があってその中でお話が進むのだけど、今回は最初にある程度奇妙な状況はあるものの、その状況自体の謎が徐々に明かされて行く感じ。似ているようで、ちょっと違うね。そして「家族」。西澤保彦といえば「家族ネタ」だったりして、「性格的にイヤな人」を書かせればとても上手い西澤保彦は同時に「どこかしら自分も身に覚えがありそうなイタイ家族関係」を書くのが上手いわけだけれど、今回はその「家族」が「壊れたさま」を描くのではなく「作り上げる」物語(と書いてて思ったが、今回も、ある意味壊れた家族を描いてはいるのかな)。
どーんとした「びっくり感」は無かったけれど、「家族というのは作っていくものなのねー」と、ほんのりとしんみりしながら読み終えました。
そろそろ「こっち側」に帰って来てくれるのかなと、今後にも期待できたのでよかったよかった。
- 作者: 西澤保彦
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2004/08/20
- メディア: 新書
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★★★★☆:面白かった本