萩萩日記

世界に5人くらい存在するかもしれない僕のファンとドッペルゲンガーに送る日記

『歳月』

僕は佐賀県出身で、で、まあいろいろといわゆる故郷ということに関しては微妙な気持ちが多々あって特に中学のときとかは絶対にここから出ないといけないと強迫的に思っていたりもしたのだけど、やはり年を取ると丸くなるのか、はなわのおかげでネタにしてもよさそうな気がしてきたのか、最近外国人の友人ができたり外国語を勉強したりするせいで「自分ち」的なところへの視点が変わったのか、ま、実際はそれ全部なのだろうけれど、とにかく最近は、出身地的なネタについても、多少、目を向けても良いかなと思う気がしてきた。それでも、郷土愛全開みたいな物や人に関しては、どうしても(その郷土愛全開という点においてのみではあるが)違和感を感じてしまう。

さて、そんなわけで「佐賀の乱」で破れてしまった江藤新平を描いたこの『歳月』。子供のころよく行った公園に銅像があったので、なんとなく「エライ人」というイメージはあったのだけど。読んでいる間、結構イタかった・・・。

「理想を語る」ことと「理想論を語る」ことは違うわけですが、その違いの部分のイタさというか、ものすごく論理的に考えているようで、というか論理的に考えているからなのか、とても大事なところで間が抜けて能天気なところ、どうも他人事とは思えず。というか、そういう風に妙に自分に引き寄せて読んでしまうところが、地元ネタゆえということなのだろうか。

しかし、なぜ司馬遼太郎はこの本書いたんだろう。『新装版 竜馬がゆく (1) (文春文庫)』なんかは愛にあふれているように思えるけれど、この本は要所要所で「だから江藤新平はダメなんだ」とか「どうもこの江藤新平という男はバカだ」とか、そういう話が挟まれていて。ま、そんなに司馬遼太郎の本読んでないけどね(というか実はあまり好きではない)。

激動の時代に、激動に乗り遅れた秀才が、自分の手で激動を起こそうとしてその激動を利用されつつ飲みこまれていった、ある意味ものすごくロマンチックな切ない話。

無理矢理まとめてみましたがダメですか?

歳月 (講談社文庫)

歳月 (講談社文庫)

★★★★☆:面白かった本