萩萩日記

世界に5人くらい存在するかもしれない僕のファンとドッペルゲンガーに送る日記

五美大展に行ってきたよ

去年知り合いが出してた関係で五美大展に行きまして、そのことを日記に書いたことがあるんですが、そのせいか、たまに五美大展で検索してこられる方がいらっしゃいます。だからってわけではなく、単に面白そうだからという理由で、今日、見てきました。六本木での打ち合わせの帰りに。去年行ったおかげでボリューム感みたいなのはわかってて、2時間かけて見る予定だったんですが2時間でもちょっと足りなかった。が、今日は雨のせいで長靴だったので延長するのが辛くて2時間で回った。

というわけで、去年と同様、気になった作品の感想を。

あ、たぶん感想を読んでもあまり具体的にどういう作品かはわからないと思うので、ひっかかるのがあったら見に行くのが良いと思います。入場無料だよ。

藤崎美和/eternity

細くて小さい短冊みたいなのがびっしりと一面に描いてあって、なんかミニマルアートなのかなあと思いつつも、その細い短冊がぼんやりとした印象で面白いなあと思った。フロッタージュという手法で作られているそうです。

知野珠里奈/コンニチワ、

ビデオ作品。カメラの一人称視点。いろんな通りすがりの人に「コンニチワ、」と声をかける断片をつなげたもの。かわいいし、押しつけがましくないし、良い感じ。

齋藤藍/どうしたってあたしは女子、女子なのよ

タイトルで期待したが(エロい意味ではなくて)、ちょっと、想像の範囲を越えてない感じで残念。

大野美織/メリゴーランドに乗って夢を食べる

インスタレーション。黄色い、紙、違うな、梱包用のプラスチックのひもかな。ひらべったいやつ。あれと、真珠のような珠とが置いてあって。バクの形してるんだが、ひも(たぶん)100%のものと、珠100%のものと、その中間のと、6種類のものが、それぞれ机の上に置いてあって円状に配置されてる。で、「わるいゆめを」とか、机の横に書いてあって、あるメッセージを読むためには、その机の上にあるものは見れない。その逆もまた真。なかなか雰囲気がかわいくて好きだったです。

渋谷友香理/群鳥

小さな、たぶん紙でできた鳥が並べられてる。

並べられてるのだが、その並べられてる場所の壁に、なんだか小さな文字でびっしり書いてある。

タイトルは小火(ぼや)。

怖いので全部読んでないけど、かわいい字で怖いこと書いてあると、よけいに怖くて素敵だと思った。

岩永佳子/神はこれを見てよしとした

花のオブジェかな。ただしかわいい感じではなく、ちょっとグロテスクな、暗い赤の、人の大きさほどもあるオブジェ。こちらに向かって花弁を開いている。なんとなく、アニッシュ・カプーアの「虚空」と雰囲気は似てる。似てるけど、これはこれで素敵。そしてタイトルも良いね。ギリギリの線な気はするけど。

山岡真以子/でも・・・まあ・・・、中学生の恋だよね。

変態なんでタイトルの時点で胸キュンですが、なんだか過剰にかわいい感じの(つっても丸くも萌えでもないが)彫刻。先輩にラブレター渡してたりする。過剰に内股。3体あったんだけど、それぞれ、パステルカラーの緑と赤と青で、清潔感もある感じ。卒業制作展という場だから良かったのかもしれない。同じものが商店街の入口にあったらどうだろうな。でも、結構良かったな。これまた、なんかギリギリのラインで、もうちょいかわいい感じだったらやり過ぎだし、もうちょいかわいさが足りなかったら、よく公園とかに置いてあって「なんでこんなの作ったんだろう」と思われる銅像みたいになってたかも。

五十嵐純/猿猴が月

自分の手元に映る月を見つめている、座っている人物の像。妙にリアルで気持ち悪くて良かった。

古谷健介/童貞の夢

まあなんつーか、ひどい作品ですよ(笑)。いい意味でだけど。タイトルの通り、童貞の夢であるところの、かわいいお姉さんたちが大挙して自分の前に裸でいる絵。絵の感じは、萌えな感じでもなくリアルでもなく、ちょっと昔の少年マンガって感じかな。で、絵自体にお風呂場な感じの透明なカーテンがかかってたりして。

こういう「どうでもいい」ような絵を卒業制作でやれるところがすごいなと思う。

ばかだなあ。

杉山潤/いわ

巨大な、モノリスのような直方体と、同じく巨大な山のような物体の絵。波打ち際。逃げまどうようでもあり、「いわ」を崇めているかのようでもある人々が小さく描かれてたりして。

そんだけなんだけど、なんだか崇高な感じでカッコよかったです。

永井宏実/depth.1

これが今日の一番ヒットかなあ。抽象画のようで、何を描いてあるのかはよくわからん。全体的に、ぼやけた感じで、淡いトーン。なんだけど、なんというか、どうも、ほんとうにぼやけて見えてしまい、近づいて見てようやく、それが平面であることに気がつくような感じ。絵として面白いというよりは、見る感覚が面白かった。

また見に行くかも。

松村忠寿/騎馬戦

白いキャンバスに白く騎馬戦の絵、みたいな感じ。もともとこういうの好きというのはあるが、考え落ちになってない感じが良かった。

松田悠助/無題

あとでも書くけど「無題」ってタイトルはないよなあ。さておき、軍服の人がモノトーンの五輪マークの前で、走り高跳びをしている絵。メッセージがありそうでよくわからないバランスが良かった。

鈴木さやか/メメント・モリ

ほんとにもう、ものすごくごく普通に「絵」なんだけど、いい絵というのはいいですねえという感じ。椅子に座っているおじいさん。夕暮れ。病室なのかな。視線の先には、おばあさんがいるのか、いないのか。メメント・モリ中のようでもあり、もうそれを超越したところにいるようでもあり。

田中菜穂子/オニキス

薔薇みたいな絵。花弁を真上から。でも抽象画みたいな感じになっていて、というか抽象画なのかもしれん。筆のタッチだけで見せるような感じなんですかね。

まあ、雰囲気からオキーフのこととか思い出したが、それよりもっと抽象かなあ。オキーフをよくしらんから見当違いのことを言ってるかも。

綺麗だったです。

八塚多可良/街

カラフルな絵。最初平面に図形が敷き詰められてるのかなと思ったが、よくよくみたら立体で、街だった。へえ、と思った。

萬納正國/抱擁

木の物体。ひとかかえほど。

真ん中の接木のあたりに耳をあててください。音が聞こえます。作品は触わってけっこうです。

という注意書き。「触わって」じゃなくて「触って」だよ、とかいうツッコミはおいておいて、木の物体にCDプレーヤーがつながってて、音が伝導していると。

で、ひとりでこういうところに行って体験型のことをやるのは若干恥ずかしいのだが、どうせオレンジの上着にオレンジの眼鏡って時点で恥ずかしいのは同じだろうと思ったので跪いて木に耳を当ててみた。

音が聞こえた。

が、その音が聞こえたことより、そうすることで木に触ることができて、肌触りを楽しめたのが良かった。

師岡千穂/Dolce

遠目に見たとき、「なにこれお菓子みたい」と思ったでかい物体があったのだが、タイトルが「Dolce」だったのでわらった。おいしそうだった。

小友沙織/LOST-exsist

これ、タイトル写してて思ったが「exist」の間違いかな。でもアーティストはわざとそういうことやったりするからなー。

まあそれはそれとして。

半分に切られた丸い石が蜂の巣状に敷き詰められている。

そんな感じ。

そんだけっちゃーそんだけ。

でも、落ち付く。

寺とかに置いてあったら外国人をダマせそう(笑)。

中島真理子/air

こちらも敷き詰めもの。石かな。光沢がない、高野豆腐みたいな石。だーっと敷き詰めてあるだけなんだけど、これまた雰囲気が良いと。

横田達郎/風景は壁

あくまでも「飛び出す絵」みたいな程度の立体感のものが壁にかけてある。

絵と立体の中間みたいな感じが面白かった。

中川恵/砂漠の背中でUFOとどらやきが出会った

タイトルのとおりの作品で、砂でできた(たぶん)オブジェがあり、ふたこぶラクダみたいな状態になってるんだけど、その両方のコブに、UFOとどらやきがいる。

かわいい。

物語が始まるところという感じ。

まあ、始まっちゃうと陳腐になるのかもしれんが。

門田訓和/untitled

たぶん梱包用のプラスチックのひも。黄色。それで、でかい球を作ってある。それだけ。それだけなんだが、なかなか良いので、見に行った方が良いと思う。

??/??

で、その作品の隣にあったやつがすごいかわいかったのだが、タイトルとか作者名がわからず。ムサビは全体的にネームプレートの配置がわかりづらかったです。

で、どういうものかというと、色鉛筆をまとめたものをカーヴィングしてあるもので、色鉛筆をまとめたものが彫る対象なので、たまに色鉛筆の芯の色が見えるんですね。これが、きれいだしかわいいし。なんて人なんだろう。身近なものの違う見え方を提供してくれるのっていいなあ。

外川麻未/ladder

そのタイトルどおり、はしごのオブジェ。ほそい。そんだけなんだが、良かった。

中原智美/mass-One for security all for security

言葉ではうまく説明できませんが、すごくユーモラスな絵。警備員さんたち多数と、工事中ですよーの赤い円錐(でもこの絵の中ではモノクロ)が、迷路を作ってる感じ。

中原智美/mass-パターン(喫茶)

で、このひとのもうひとつの作品。喫茶店の絵。19組のカップルがチューしてる。で、チューしてるところがハートで隠れてる。これまたそんだけの絵なんだが、すごくユーモアを感じました。

川端遙/ごころ

なんつーか、萌えな絵で、こんなん作ってどうすんのと思ったのだが、なんか魅き付けられるものがあり、結局、ゆっくりと見てしまった。版画で、そんなに色数がないので、ソラリゼーションがかかったような感じになっていて、それが素敵だったのかな。

田村陽菜/グルーミング・アート

美大なのに絵じゃない(笑)。論文?

今これを見ているあなたへ

私は文章をまとめるのが下手なので、誰かへの語りかけという形でこれを書くことにします。私から「あなた」への手紙だと思ってください。

あなたは私の作品を見て、「油絵科なのになぜ文章なのか?」と不思議に思われるかもしれません。しかし私にはこれしかないので仕方ないのです。私は、絵を通して自分を表現することができません。4年間やってきて、ついに無理でした。だから文章で表現することをどうか許してください。私にはそれしか扱えないのです。

と、こういう文章から始まる紙が置いてあり、小冊子がふたつ置いてあった。

で、本人は謙遜してるがなかなか読ませる文章で、1冊目はつい全部読んでしまった。2冊目のインタビュー集も読みたかったけれど時間が足りずギブアップ。住所を書いたら冊子を送ってくれると書いてあったがさすがにそれはねえ。なのでもし万が一これが田村さんの目に留まったら僕に冊子送ってください☆

で、この「私は、絵を通して自分を表現することができません」という文章、作りなのかもしれないんだけど、なんだか切迫感があって、胸を打たれたりしました。「無理」なのに体裁だけつくろって「絵」を描くより、よっぽど良いよねこの方が。

そうそう、グルーミング・アートというのは要するに自己満足のアートということで、冊子の中に、

女子の美大生が多い割に、女性アーティストがまだまだ少ないのはなぜか。

という問いがあり、普段考えたことがなかったので「なるほど」と思った。

でもひょっとしたら、それは、女子の方がツブシが効くから?

ああ、こういうこと書くと怒られるかな。

まあいいや。

香川真由美/オユウギ

顔が見えない下着姿の女子たちがステージ上で「オユウギ」してる絵。「オユウギ」という言葉、僕はシニカルな意味に取ったけどどうなんだろう。そしてこれはある程度仕方ないことだと思うが、この作者が美人かどうかで、この絵の意味って変わっちゃうんだろうな。

阿部浩之/chimeras/キメラ

このネタは笑った。

2006年から2009年にかけて使った千円札の番号を全部控えて、かつその用途も控えて、付箋に書いて貼ってある。壁いっぱいに。で、同じ千円札が自分のところに帰ってくるかどうか実験だったらしいのだが、3年やって2枚、手元に帰ってきたらしい(笑)。

なんつーか、このネタってやってみないとわかんないし、それで卒業制作にしちゃう勇気って結構すごいものがある気がするし、あとこれ、どっちかってーと社会学のような気もするし。

でも、付箋を貼ってある壁が、これはこれで単純に遠くから見て綺麗というのが、さすが美大という感じでした。

佐藤未来/2009年の初詣

初詣で買ってきたお守をバラして展示してあった。ばちあたり(笑)。解体作業のビデオ付き。ビデオを流してるモニタがレトロで良かった。

永瀬美緒/−だけど

フォトリアリスティックな絵。三姉妹(たぶん)がけだるそうにくつろいでるところなんでしょうか。そんだけといえばそんだけなんだが、なんか、よかったです。

井亀玲子/万物は流転する

日本画の人らしい。宗教画っぽい絵。題材と絵の内容と日本画の画材が微妙にズレてる感じがして、そこが素敵だった。

小林由佳/桜屏風(木像嵌)

屏風でした。

いや、なんつーか、すごーくかわいいのだが、これを卒業制作でやるというのが、普通すぎてびっくりなんだが、最終的に選ばれた「普通」な気がするのですごいと思った。

奥村靖子/文机

で、この人のはさっきの屏風の人の隣にあった文机なんだが、本当に、普通に文机なのです。工芸の域な感じ。すごい。用の美。

梶奈津子/アルミ

これはかわいかった!

アルミの缶とかに書いてあるリサイクルのマークをそのまま立体にしてある。もちろん素材はアルミニウム。リベットなんか見えちゃったりする感じ。

ストラップとかにしたらかわいいのに。

お金のにおいがする作品(笑)。

味岡聡/毘沙門天

少ない書き込みで表現された絵。

というぐらいしか説明できませんが、なんか良かったんですねー。

市川真生/想う

廃墟っぽい窓の外に捨てられた人形と一緒にいる寂しそうな顔の少女。

でも、寂しすぎない表情。

ただの絵といえばただの絵なんですが。

素晴らしい絵でした。

山本大貴/A☆I☆W☆S

これもただの絵なんですが。

リアルな絵。ビキニな感じの美人なねーちゃんを中心に、果物やらうさぎやら、コラージュ。

ポップで、どぎつい感じ。

もうちょいやり過ぎると、イヤな感じになってたかも。

萩原綾乃/禁煙する理由とそんな話

ハレーションを起こしたような絵。

そんだけなんだが(ってこればっかり)、色面の大きさが面白かったりした。

小口ウィリアムズ志伊菜/hesitation

2009年にこの絵はどうかとは思うが、タイルのような幾何学模様が、消失点に向かって消えていく。うーん、説明が違うなこれじゃあ。まあ、そういう絵が、3枚に分けて描かれているのです。3DCGで描いたらすぐに終わりそうだが、それをあえて手で描くのが楽しい、と僕は思ったが、どうでしょう。

蛭田裕紀子/Life line/生命線

4枚のキャンバス。並べてある。左から右へ、太い線。でも、その線は、どんどんかすれていく。

本当に年齢別の人口に対応した濃さだったら、僕はもっと面白かったけどねー。

まとめ

えー、以上です。

以上ですが、実はこれ、去年も感じたんだけど、「untitled」ってタイトルの作品、多すぎ。21世紀にもなったんだから、そんなタイトルやめればいいのにと思った。まあ、それぞれはそれぞれで意味があるのかもしれんが、結局他人とかぶっちゃってるし。

というわけで、untitledというタイトルの作品をコラージュにしてuntitledsという名前でアップしようかと思ったのだけど、さすがに作品の写真をそのまま使うのはマズイかなと思ったので(ちなみに写真を撮って良いことは確認しました)、untitledなネームプレートをコラージュ(つーか並べるだけ)しておきます。ちなみに気がついたものだけで、全部ではないです。あと「無題」とかは入れてません。

untitleds