近所に音楽大学があるという幸福
こないだ「また洗足学園音楽大学で何か楽しいのやってないかなー」とサイトを見てたら純邦楽のコンサートを発見。詳しくない人のために補足すると、単に邦楽と言われることもある純邦楽は、雅楽とか長唄とか箏とか尺八とか、要するに「日本の伝統的な民族音楽や古典音楽」のことです(Wikipediaより)。
少し前にもベートーヴェンの『運命』とかシベリウスの『フィンランディア』とか聴けて楽しかったし、今回は企画的にも面白そうだからノリノリで行ってみた。
そもそも段物って?
企画タイトルにある「段物再発見」だけど、そもそも僕は段物を発見したことがないので、再発見のしようもない。ので、「段物」が何なのか軽く調べてみた。それによると、要するに箏のための器楽曲で、基本的にブロックの流さが決まっていて、練習曲から発展したもの、なのかな?今回のコンサートは、いろんな『六段の調』を演奏してたから、きっとそういうことなのかなあと思う。ちなみに『六段の調』は、学校でも習った(たぶん)八橋検校のアレですね。
「合奏曲六段」 藤井凡大 作曲 - 女声合唱付き-
まずはその『六段の調』をいろんな楽器で演奏。女声合唱まで付いてた。木管楽器もいた気がする(すでに記憶が曖昧)。箏の人とか三味線の人とかがカラフルな着物の中、合唱の人はこれまたカラフルなドレスで、なんだか違和感バリバリだった。演奏は、悪くはなかったけど、これは聴くものというより演奏して楽しむものなんだろうなあと思った。そもそも、純邦楽がステージの上で演奏されてるのを客席で聴くってのが変なんだろうしね。
箏、柳川三味線、一節切尺八合奏「すががき」復元演奏
江戸時代初期の模様をお届けしたような感じのトリオ。一節切(「ひとよぎり」と読むそうな)という尺八の前身の音が面白かった。江戸時代初期って、ベートーヴェンよりハイドンより、全然前だもんなあ。なんか「クラシック音楽」ってすごい昔の音楽のような気がしてしまう。たとえば第九なんか、江戸時代でいうと末期なんだよね(第九の作曲が1824年。異国船打払令が1825年)。
ともあれ、江戸の町娘たちがこうやって「お琴の練習」をしてたかと思うと、少しかわいく感じた(まあそれこそ、「町娘」が「お琴の練習」ができるようになったのなんか、もっとあとだろうけど)。
琉球箏曲「六段菅撹」
おばあちゃん的な人によるソロプレイ。演奏の合間に「エイヤッ」という掛け声が入るんだけど、なんかもう本格的に勢いなくて、これがJKなら「お前やる気ないならステージで演奏すんな」と言いたいところなんだけど、おばあちゃん的な人なので逆に力が抜けてる感じがグッと来た。全然違うんだけど、安東ウメ子の『ウポポ サンケ』を思い出したりした。
箏曲「五段砧」
6台、だったと思うんだけど、箏による合奏。リズミカルに響いてくる音のシーケンスが気持ち良かった。砧というのは「アイロンのない時代、洗濯した布を生乾きの状態で台にのせ、棒や槌でたたいて柔らかくしたり、皺をのばすための道具」(Wikipediaより)らしく、そういう、労働歌じゃないけど、リズミカルな曲だということだった。
三絃合奏「八段すががき」
三味線の後ろで鼓が鳴ってたんだけど、鼓の音を聴くたびに「思ってたより音が高い!」って思う。もっとこう、腹に響くもんなんじゃないのかなあ打楽器って。あんまりピンと来ない。
箏曲「六段・八段合奏」
冒頭で書いたように、段物はある程度サイズが決まっている。だもんで違う段のものを同時に演奏したりするらしい(謎)。本来一緒に演奏するつもりで作曲されていないんだけど、「隣の演奏につられないように」同時に弾いたりするんだって(ますます謎)。謎ではあるんだけど、その発想はわりと狂ってて面白い。十二音技法の現代音楽曲を聴いてると思えばいいんかねって感じ。ふたりでの演奏だったんだけど、終わったときに司会の人が、「お気付きのように○○さんは生田流、○○さんは山田流でした」とか言ってて、「観客のレベル高え!」って感心しました。
尺八古典本曲「一閑流 六段」
尺八による『六段の調』の演奏。司会の人も言ってたけど、六段を編曲しているのを聴いているというよりも、尺八の音の中にたまに「六段が聴こえる」感じ。とても良かった。たとえばフルートなんかは「息の楽器」だと思うけど、尺八は「風の楽器」って感じがする。
「新譜音悦多Ⅱ〜七段合奏今様」松尾祐孝 作曲(初演)
初演てことはつまり新作で、要するに現代音楽ですね。いまのリスナーに向けた、邦楽器を使った曲だと。わりと好きな感じの曲で、聴いたあと「最近現代音楽はフィリップ・グラスばっかり聴いてたけど、他のも聴きたいなあポスト・ミニマルあたり」とか思い、実際にジョン・アダムズ"Shaker Loops"、グレン・ブランカ"Lesson No 1"、マイケル・ゴードン"Big Noise From Nicaragua"とかを聴いたりした。この3人がポスト・ミニマルなのかどうかはよく知らないんだけど、なんとなく、ミニマルが1拍とか2拍をひとつのフレーズとして組み立てていくのに対し、ポスト・ミニマルは1小節とか2小節のフレーズを繰り返して組み立てていく感じ(僕の勝手な意見です)。
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で、好きな感じの曲ではあったんだけど、「これ邦楽である必要あるかなあ」とは思った。特に尺八はもっと面白い使い方できたような。残念。
というかさあ、「新譜音悦多」で「シンフォニエッタ」と読ませるのイタすぎだろ。こないだ『ヤンキー化する日本』を読んだおかげで「あー、なるほど」とは思ったけど。
おわり
というわけで何となく全曲の感想を書いたらいつにも増して長くなったなあ。3,500文字オーバーだって。誰が読むんだろう。長くても1,500文字くらいまでにしないといかんらしいよ。話し相手がいないことバレバレだね。
しかしこれだけ聴けて1,000円とは本当におトクだ。狙ってなかったけど音大の近くに住むの良いわ。
以上、純邦楽の現代曲である丹波明の『音の干渉』を聴きながら書いてみました。
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