村瀬孝生/おばあちゃんが、ぼけた。 (よりみちパン!セ 25)
図書館にはヤングアダルトコーナーってのがありまして、小学校高学年から中高生あたりをターゲットにした本が並んでるんだけど、意外とこれが面白い。著者も、「子供相手」なので、結構アツイ感じで語ってたりするし。ま、僕がガキなだけなのかもしれんが。
で。
祖父母と暮らしたことがないであろう、いまの中高生に向けて書かれた、老人ホームでのできごとなどについての本。
ちょっと「きれいごとだろ」と思う部分もあるけど、ま、それはそれで良いと思う。特にヤングアダルト向けは「きれいごと」をちゃんと書けるという面白さがあったりはするし。
ぼけと、折り合いを付けることの難しさ。おむつとかも。それから、いろんな死の光景。
その「ぼけ」に障害を与えているのは社会のほうなんだ。
最後の「ふつうに生まれて、ふつうに死ぬこと」で、生まれてから死ぬまでが素描される。良い、という感想は変だけど、すごい。
別の本で香山リカさんが書いてたことだけど、人生の最後でぼけてしまったからといって、それまでの人生がすべて否定されるわけではないと。
スティーブンイッサーリス/もし大作曲家と友だちになれたら…―音楽タイムトラベル
癇癪持ちで結構性格の悪いバッハ。
無一文で死んだモーツァルト。
コーヒーは豆が60粒ぴったりじゃないと許せないベートーベン。
指揮をしながら空想の世界に入ってしまう無口すぎるシューマン。
好き嫌いが激しすぎる偏屈なブラームス。
整理整頓好きでドケチなストラヴィンスキー。
結局、みんなかなり変な人。
オススメ曲ガイド付き。
あと邦題もかなり良い。原題は「なんでベートーベンはシチューをほっぽったのか」とかいうタイトル。このタイトルだったら、たぶん読んでない。
とても良い本だった。
伏見憲明/男子のための恋愛検定 (よりみちパン!セ)
最初の方に恋愛検定があって、テストみたいな感じになっており、「点数低かったらどうしよう」とちょっと怖がりつつ受けたところ、一応大丈夫だったから良かった。
なんか、こんな本読んでる時点でモテなさそうな気はすごーくするけど、はたから見てる分には面白い本だった。少年、頑張れ、と。
北尾トロ/気分はもう、裁判長 (よりみちパン!セ)
傍聴を通して、裁判のことをわかりやすく、興味が持てるように書いてある。良い本だと思う。
が、やっぱり僕は裁判員制度には賛成できんなあ。プロがやった方が良いと思うんだよねえ。
あと「傍聴席に関係のない人がいることで、被告人の緊張感が高まり、再犯率が下るのでは、また、傍聴席から見ることで、被告人になりたくないという気持ちになり、再犯率が下がるのでは」みたいなことが書いてあるが、それはどうなんだろう。だったら、テレビで流せば良いだけのような。
ハンス・マグヌスエンツェンスベルガー/数の悪魔―算数・数学が楽しくなる12夜
ソフィーの世界 哲学者からの不思議な手紙の数学版かな。
0.999999999...が1の話って、小学生のころに習った覚えがあるけど、いまだにどうも納得できん(笑)。
パスカルの三角形の絵が良かった。
自然数は無限個、奇数も無限個みたいな話も、やっぱりなかなかピンと来ない。濃い無限とか薄い無限みたいな話かな。
浅羽通明/大学で何を学ぶか
ヤングアダルトコーナーにあったわけじゃないけど、そういう系なので。
こんな本を読んでしまうような人向けの本。勉強することで逃避するなと。いままでの点数がつく学校じゃないよ的な話。大衆化した大学の話や、企業のホンネの話も。
大学とは世間であるという話があって、企業は、その人個人を雇うのではなくて、その人の後ろにある世間も含めて雇うという話は、そうね、そうだよね、みたいな。
高校での授業が大学受験に役に立たないように、大学の授業も就職の役に立たない、みたいな話は、ちょっと言い過ぎだと思うけどね。役に立てない方が悪いわけで。
つまりいちばんバカを見るのは、大学は学問するところだという建前を間に受けて、一般教育科目も専門科目もしっかり出席し、レポートや試験もまじめに受け、卒論で四年間の総まとめをするんだなんて思いこんじゃった奴じゃないか。
大学に入ったらすぐにメンタツを読め、だそうです。
溝上慎一/大学生の学び・入門―大学での勉強は役に立つ! (有斐閣アルマ)
で、上の本の真逆の本。上の本から10年後に書かれてる。
大学は勉強するところだ、という意識が必要みたいな話。勉強のときの他者の存在が大事だよとか。
ま、正直、パンチが弱いね。仕方ないけど。
貴戸理恵/コドモであり続けるためのスキル (よりみちパン!セ)
なんか「よりみちパン!セ」シリーズ、すごい読んでるな。
で、今回はパンチのあり過ぎるタイトル。不登校経験のある著者の本。
コドモであり続けるというのは、「頑張ればなんとかなる世の中である」ということに実感を持てない人が、そんな実感なんか持たなくても行きていけるようにするとか、そういうことのようだ。著者的には、「自分の問題を、自分の言葉で語れるようになる」ことみたい。
途中からフェミニズムの話とか出てきて、そのあたりはちょっとどうなのかなあとか。そこ熱く語られるとちょっと引くというか。まあ大事なのはわかるけど。
個人的に、女の人が、いつ、自分のジェンダーとしての女性性に気が付くのかということに興味があるんだけど、聞くと変態みたいだから聞けない。
浦河べてるの家という、精神障害を抱えた人たちが集まる福祉施設ところで行われているという「幻覚&妄想大会」というのが、なんかすごい感じだった。幻覚や妄想を、披露しあう会。で、すごい幻覚や妄想の人は表彰されると(笑)。おもしろいね。
本江邦夫/中・高生のための現代美術入門 ●▲■の美しさって何? (平凡社ライブラリー)
カンディンスキー、モンドリアン、マレーヴィチを中心とした、抽象絵画の入門書。
いろいろ、ひととなり的なことも知れて良かったのだけど、絵の見方の提示が、絵の見方の強制になってるような気がして、そこがちょっとなという感じ。
まあ、中高生向けということだから、仕方ないのか?
多田文明/ついていったら、だまされる (よりみちパン!セ 30)
中学生ぐらいに向けた、キャッチセールスや出会い系サイトは怖いよという本。
さらっと読めるので良いのではないでしょうか。
出会い系サイトの裏側みたいな話もあるから良いよね。
やっぱりこういう話は知っておくに越したことはないし。
ただ、僕みたいに、子供の頃から親に美人局の怖さを説かれたりすると、ちょっと臆病になってしまったりするのが難点(笑)。