萩萩日記

世界に5人くらい存在するかもしれない僕のファンとドッペルゲンガーに送る日記

タモリ倶楽部に出ました

ちょっと前の話ですがタモリ倶楽部に出演させてもらったのでその話を少し。

出演したのは8月3日(金)の深夜のタモリ倶楽部『時刻表の音楽 -山手線のために-』という僕の自主制作CDを、タモリ倶楽部の『見ても聴いてもわからない特殊音楽家ライブinジャパン』という企画で紹介してもらったんだけど、当日はなんだか緊張してしまい、部屋を真っ暗にしてドキドキしながら放送を見てました。緊張して見れないかなとも思ってたんだけど、見たら見たで自分で笑ってたりして(恥)。なんで緊張してたかというと、「ウケなかったらどうしよう」とか、「寒いこと言ってたらどうしよう」とか、そういうこと思ってたわけですね。プロが編集するからそこは大丈夫だろうと自分に言い聞かせてはみたものの、ちゃんとテレビ出るの初めてだし。ねえ。

そもそも何で出ることになったのかと言いますと。

ある日、神保町のジャニスというレンタルCD屋さんからメールが来たんですね。そこには「タモリ倶楽部を制作されているハウフルス様に萩原様のCDをお薦めしたところ興味を持っていただきまして」云々と書いてあったんです。

経緯の補足が必要なのだけど、ジャニスはマニアックなCDを置いてあるレンタルCD屋さんで、僕はよく現代音楽を借りたり、勉強してみたいダブステップやらを借りたりしてるんだけど、そこ、マニアックなだけに、借りるお客さんには自分で音楽やってる人も多いわけです。で、ジャニスの企画として、ジャニスのレンタル会員でCDを作ってる人は自分のCDを置いてみないか的な話があり、面白そうなので僕も置かせてもらってたわけですね。そしたら、紹介してもらえたと。

収録までに何度か打ち合わせをして、僕の曲の作り方を何度も説明をしてわかりやすいパワポにまとめてもらったりして、現代音楽とか聴きなれてるとあの作曲法ってそんなに珍しくもないんだけど、やっぱりそうじゃない人にとっては謎なのかなあと改めて思ってみたり。

さて収録当日。雨が降る中テレ朝に到着。テレ朝には何回か来たことあるんだけどいつも迷う。控室に入って少しすると宇田さんも到着。僕は一方的にウダーのことも知っていたので少し話をさせてもらったり。お互い技術関連の仕事をしてるということで、わりと仕事っぽい話が主で。

リハ的なものはほとんどなく本番へ。まずは『新宿駅 -オギュスト・ミュステルのために-』のライブ演奏。実はソロ活動をするときはMCも文字でやったりして、あまり演奏中は動きのない感じでやってるんだけど、カメラが僕を写してるしそういう訳にもいかないかと思い途中からノリノリの演奏に変更(放送ではこのあたりが使われてた)。

そのあとは放送と同様の、僕の作曲方式の説明。用意してもらったパワポのおかげでわかってもらえて、ありがたや、ありがたや。

で、実はその先は丸々カットされてるんだけど、『時刻表の音楽 -山手線のために-』に収録されている曲を3曲取り上げて、それぞれオマージュしている現代音楽の作曲家の説明とともに、解説をしてたんですね。現代音楽の楽しみ方、みたいな感じで。紹介したのは『東京駅 -ジェルジ・リゲティのために-』、『駒込駅 -モートン・フェルドマンのために-』、『原宿駅 -テリー・ライリーのために-』の3曲。山手線の全29駅の時刻表でそれぞれ曲を作ってる話をしたら、タモリさんからさすがのツッコミが。

「でもそれだと、全部ほとんど同じ曲になりませんか?」

これはですね、ものすごく的確なツッコミで、山手線の時刻表って結局スライドしてくだけで、相対的な意味では全駅ほぼ同じタイミングで電車が発車するわけだから、発車のタイミングで発音している以上ほぼ全駅同じ曲になることに、すごい短時間で気付かれてるんですよね。すげえ、って思った。

さておき、新宿駅以外の3曲を聞いてもらって、それぞれの曲で作曲方法を変えてることがわかって「こんなに違う曲になるもんなんだなあ」と感心してもらえて嬉しかった。

東京駅はリゲティ100台のメトロノームのためのポエム・サンフォニックへのオマージュで作った曲で、東京駅を電車が発車するたび、サンプリングしたメトロノームの音が鳴るんですね。ただ、同時に鳴らしてもいけないので、1/256分音符という超細かい差を各路線に対して付けてあって、同時には鳴らないようにしてます。ポエム・サンフォニックみたいな「どんどん静かになる」のとは違うんだけど、「静かな中から激しくなり、落ち付いて、また激しくなって寂しく終わる」という時刻表の音楽らしい流れになってます。ポエム・サンフォニックは映像もあるんで見てみると楽しいです。

駒込駅はフェルドマンへのオマージュ。僕にとってフェルドマンは「静謐」の作曲家なので、ピアニッシモな感じで音を出すことにしました。で、休符も長くないといけないだろうということで、発車と同時に音を出すんではなくて、時刻表で30分にあたる長さだけ音を溜めておいて、30分経過したら音を出すということにしています。ので、不協和音が、極めて静かな音量で、微かになる、という形になっていると。「これフェルドマンか?」みたいな話もあるだろうけど、あくまでオマージュですからね。ちなみにフェルドマンは僕の大好きなベケットに捧げる『サミュエル・ベケットのために』って曲も書いてて、だから何だっていうとそれを言いたかっただけなんだけど。

原宿駅はテリー・ライリー。最初は実はin Cをやってて、電車が発車するタイミングと、in Cで次のメロディパーツに移るタイミングを関連付けてました。ちなみにin Cというのは、曲のパーツだけが決まってて、みんなで集まって適当な回数ずつ各パーツを演奏して、みたいな曲です。それぞれの人が繰り返す回数が違うんで、ちょっとずつズレが生じてカッコいい。ちなみに僕は5バージョンくらい持ってるんじゃないかな。で、そのin Cをやってたんだけど、CDで出すとなると権利関係問題になるなあと。いろいろ悩んで結局はパルス部分だけin Cをパロって、あとは『A Rainbow In Curved Air』みたいに、コロコロした電子音が断片的なメロディを繰り返してくようにしました。そのメロディの生成に、時刻表を使用したと。

長くなったけど、こうやって3曲について説明したわけなんだけど、この部分がバッサリカットされてたと(笑)。いろいろカットされるとは思っていたんだけど、まさかバッサリカットとは思ってなかったんでビックリすると同時に感心したというか感動したというか。美術さんが作ったものらしきイラストとかもあったんだけど、面白いもの作るためにはそういうの「もったいない」って思っちゃダメなんだなあと。放送後にたまたまソラミミスト安齋肇さんと一緒にライブをする機会があってその話したら、そうだろうねえって笑ってた。

というわけで放送的にはこのあとの稚内駅の紹介につながるわけだけど、その演奏の前にかかってたのが原宿駅なんですね。タモリ倶楽部の元ネタを載せてるサイトで「不明」と書かれていたんで教えたりもしました(URL失念)。

で、最後は最北端の駅である稚内駅の紹介。バッハモチーフという、BACH(シ♭、ラ、ド、シ)を2回繰り返すだけ。まるでドローン。ライブでは1回やったことあったんだけど、ちょっとマニアックすぎるかと思って、1回しかやったことないネタでした。が、意外とウケがよかったので驚いた。

というか、今回取り上げてもらった5曲についても、この5曲が取り上げられるんだねえという面白さがあったなあ。

なので、その後やったライブでは必ずやるようにしてるんだよね稚内駅。笑。

放送後、エゴサーチをして、みんなから「おっさん」と言われていたことに軽くショックを受け、その後その話をした高校生に「だっておっさんじゃん」と言われ再度ショックを受け、たまたま僕が出てることを知らずに見た知り合いからは「びっくりしました!」なんてことを言われたり、リアルな感想をたくさん見ることができて非常に面白かった。

なんか手短かに書くつもりが長くなっちゃったなあ。

えーと。

そうそう。感想のツイートを検索してたら、たまたまレコード芸術にも紹介してもらっていたことを知る。これはあなた、ビックリですよ。時刻表の音楽については、

自動生成された曲なのに巧みな加工のおかげか誰かのパロディとして聴ける曲もあり(例えばヴィシネグラツキに捧げられた〈目白駅〉の微分音音楽とか、ペンデレツキに捧げられた〈神田駅〉のトーン・クラスタなど)、全体がよく練られた遊びになっているのが面白い

なんて素敵な紹介をしてもらったりして(他にも『Purple Phase』『Slow Music』を紹介してもらってた。本当にありがたい)、ここでも取り上げられる曲の違いが面白かったりしてね。

ああ、あと、Twitterのお友達から、速攻で使ってる言語は何か聞かれたのも面白かったなあ。ツイートを検索してたときは「Vim使ってる!」みたいな人もいたし。

僕がPCにavengers in sci-fiのステッカーを貼っていたことに気付いてくれた人も何人かいて、「やってる音楽が近いからかな」みたいなことを言っていたのだけど、実はそうではなくて、たまたまちょい前にavensの仕事したからステッカーもらったんだよね(サイト絡みでプログラムを書いた)。笑。あのステッカーを貼ってあった場所には元々ケロロ軍曹のシールが貼ってあったんだけど、テレ朝の番組に出るのにケロロ軍曹はないかもと思い、隠したのでありました。

そんな感じです。

ちょい先になると思うけど、ネットの番組にもちらりと出してもらうかも。そんときはよろしくお願いします。

あ、あと9/14に秋葉原クラブグッドマンでライブやるんでそれもお越しくださいな。

じゃーまたー。