萩萩日記

世界に5人くらい存在するかもしれない僕のファンとドッペルゲンガーに送る日記

最近読んだ本(ミステリ以外の小説と戯曲編)

桂望実/県庁の星

「県庁さん」という呼び方に、昔「東大くん」って言われて悲しかったときのことを思い出した。「阪神だって優勝したことあるんだから」って言葉は、なかなか素敵。まあ小説というよりビジネス書なのかもね。面白かったから良いけど。ベタベタな話だなと思いつつ、わかり合う話なので良かった。いくつかエピソード的に消化し切れてないものがあったような気はするんだけど。

でも、映画の方見てないんで、「あれはおばちゃんがやるから良いんであって、柴咲コウがやったらいかんでしょ」とか思う。

室積光/都立水商 (小学館文庫)

ものすごいファンタジーだとは思うけど、これまたベタで良いなと。自信を取り戻した生徒が才能を出し始めるところとか、本当はそんなに甘くないだろうけれど、才能を引き出してあげる大事さとか思うよね。なんか、こういうのに泣いちゃう。ツボに入ってしまった。

この人、スポーツやってたのかなあ。何故かわりと野球の話が長かったので。ドスコイ警備保障 (小学館文庫)もこの人だし。

で、これを読んでから、会社の近所にある本屋に面陳してある「てぃんくる」が気になって、読んでみたくてしょうがないんだけど、ファンタジーはファンタジーとして取っておいた方が良いような気がする。あと、自分の下らない幻想を他人に投影するのもよした方が良いよね。でも、「特集:ファッションヘルス」とかって何書いてあるんだろう・・・。

ベスト・オブ・イヨネスコ/授業・犀 (ベスト・オブ・イヨネスコ)

昔から読みたかった「犀」、「授業」、「禿の女歌手」、「椅子」あたりが入ってた本。

「犀」は、やっぱり面白かった。街の人たちが、どんどん犀になっていくという話。で、最後、自分以外が全員犀になっちゃって、自分も・・・、みたいな。意味はあるかもしれないけど、意味なんかないという見方もあるだろうし、面白い。

「授業」と「禿の女歌手」はいまいち。

「椅子」は、舞台で見たら面白そうだった。

全体的に、適当な論理がたまらない。会話のちぐはぐさ、と言っても良いけど。まあ、不条理演劇なんて、そこが楽しい部分だと思うんだけど。AはB、BはC、CはDとやっていったら、AとDは全然違うものだったみたいな感じ(伝わらないだろうなあ)。

現代世界演劇〈7〉不条理劇 (1970年)

もちろん本当の現代ではなくて、この本が出た1970年当時の現代。不条理演劇の2巻目みたい。

エドワード・オールビー/箱と毛沢東語録

最初、箱(文字通り、箱)がなんか芸術について語って、そのあと、毛沢東とか老婆とかが、お互いに関係のないことを話すという、とても不条理チックな作品。気持ちよかった。しかし普通の小説だとオチがないとムカつくんだけど、なんで不条理演劇は大丈夫なんだろう。構造を楽しんでるからかな。

ハロルド・ピンター/管理人

読み終わったあとは「うーん、不条理」と思ったような気がするけど、なんでそう思ったか思い出せない。

トム・ストッパード/ほんとうのハウンド警部

この人が今回の目当て。コントっぽい感じの、紛れもなく不条理な作品。ちょっとアンジャッシュっぽいかな。楽しめた。

カルロ・テルロン/罪なき告発

なんでこれが不条理演劇なのかわからん。

アルベルト・モラヴィア/ベアトリーチェ・チェンチ

これまたわからん。普通の話。までも、それは、現代が不条理だからかもしれませんね(適当)。

アラバール/アラバール戯曲集〈1〉戦場のピクニック (1968年)

いやあ、面白いんだよね「戦場のピクニック」。戦場にいる息子のところに、両親がピクニックに来るという話なんだけど。すごいくだらなくて。

ただ、かなり昔の訳なんで、「考へて」とか、「甘露々々というような表情で」とか、そういう訳があったのは辛かったな。あと、なんでそんな誤植が発生するのかわかんないんだけど、1文字だけ90度回転してたりとか。まだ写植だったってことかいな。

トム・ストッパード/ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ

ハムレットの端役ふたりが主人公になってるという不条理演劇

ちょっと難しかった。のは、つまらなかったということではなく、僕に(特にハムレットの)知識が足りないせいだと思われる。

解説にもあるように、「ゴドーを待ちながら」に似てる気はした。

で、これ読んでて思い出したのが、フォーティンブラスっていう戯曲。たしか善人会議かな。の脚本はないみたい。ちなみにどんな話かというと、

ハムレット」の終幕に、芝居を締めくくるだけに登場する究極の脇役・ノルウェーの王子フォーティンブラス役の若い俳優を主人公にした作品。「ハムレット」上演中の劇場に、「フォーティンブラスの父」と名乗る亡霊が現れるが、それは意外にも……?!

という感じ(ここから引用)。

星新一/星新一ちょっと長めのショートショート〈10〉七人の犯罪者 (星新一ちょっと長めのショートショート 10)

やっぱりうまいなあと思う。ちゃんとオチを付けるなあと。いくつか、「?」なのもあったけど。

なんとなくドラえもんと似てる?

谷川流/涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

知り合いに勧められてた。前から。なので会社のそっち方面担当の人から借りた。

ちょっと最後、尻切れトンボというか、「うーん?そんなオチなの?」みたいな気はしたけど、わりと面白く読めた。まったく前知識ナシで読んだので、SOS団の人たちがそういう人たちだと知って、「ああ、そう決ましたか(笑)」みたいな。あまり伝わらないたとえで言うと、鴻上尚史の「朝日のような夕日をつれて」で、「ゴドー来ちゃったよ(笑)。しかもふたりも(爆笑)」みたいな。

ただ、どうしても分析しながら読みたくなるというか、もうちょっと簡単に言うと、あら探しをしながら読みたくなるのは、年を取ったせいでしょうか。

ちょっとだけ書くと、主人公の本名が最後までわからないところとか、ミステリっぽいなと思ったし、ハルヒって突飛なキャラに見えるけど、これが男子だったら、ある意味普通に「探偵役」だなとか思い、ちょっとジェンダーに興味がある僕としては、なんか「男女平等?」みたいな思いで感慨深かったり、そんな感じ。

ジェンダー的に言うと、一番興味あるのは、ハルヒは、いつまでハルヒでい続けることができるのだろうということ。卒業とか就職とか結婚とか(もっと言うと彼氏ができたとき、とかでも良いけど)で、「普通」に「女」にならなくてはいけなくなるときがくるんじゃないかと。そのとき、ハルヒはどうするんだろうと。ちょっと変態っぽいけど、それを読んでみたい気はする。

あ、ちなみに、特に最初の方の、いかにもな饒舌風語り口は、ちょっとめんどくさい感じがした。

あとなんだろう、女子が女子にするセクハラも、いかんだろ。

「特別じゃない自分」みたいな部分が、いまっぽいのかなあと思った。

えーとそれから、キョンは自分のこと普通の人だと思っているようだけど、たまに声に出さないで他人と会話してるんで、エスパーなんじゃないでしょうか。

谷川流/涼宮ハルヒの溜息 (角川スニーカー文庫)

2作目ということで、楽しんで読めた。よくできたキャラ小説で。

オチ、鯨統一郎ばりのくだらないメタミステリ的なオチで、なかなか良かった。

谷川流/涼宮ハルヒの退屈 (角川スニーカー文庫)

好きなタイムパラドックスものとミステリがあったので良かった。まあ、ミステリは意外なほどオーソドックスだったけれど。

谷川流/涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)

枠組みをいじるみたいな話って好きなので、いままでで一番面白かった。

あと、最初「なんでこの表紙なの?」と思ってたけど、なるほどという感じだった。

良いですね。

谷川流/涼宮ハルヒの暴走 (角川スニーカー文庫)

まあまあ面白かったのだけど、前のがとても面白かったので、そういう意味では、イマイチなのかな。エンドレスエイトの「回数」は笑った。

あと、

前世だの後世だのが本当にあるんだったら、人類はもっと解り合えているだろうよ。

ってセリフがあって、こういう系の小説のこういうセリフ、特に若い人向けのは、やっぱりちょっと「けっ」とか思うことが多いのだけど、これは気に入った。まあただ、逆にだからこそ、輪廻を前提とする仏教では、慈悲の心が大事になるって話だったと思うのだが(あ、仏教は話は、単に自分が仏教好きだからしてるだけで、この本と仏教は、全然関係ないです。たぶん)。

それからこれはシリーズ通してのことだけれど、謎があるのは良いとして、その解かれ方の筋が通ってないというか、なんでそれが正解なのかよくわからないところが、ちょっとイヤといえばイヤだねえ。スッキリしなくて。CUBE [DVD]なんかもそうだけど、そこが気にならないところまで行ってるかどうか、という違いでしょうか。

谷川流/涼宮ハルヒの動揺 (角川スニーカー文庫)

まあまあでしょうか。

短編集なんで、そこそこな感じ。

雪山の推理劇は、ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)みたいに、ヒネリが入ってれば良かったのに。

谷川流/涼宮ハルヒの陰謀 (角川スニーカー文庫)

ちょっと感傷的すぎる文章が辛かったのと、伏線といえば聞こえは良いけれど前の作品に寄りかかり過ぎなところはあったけど、オチは結構好きだったので良かった。

が、このオチに気がつかなかったのは、年寄りってことかもしれん。

谷川流/涼宮ハルヒの憤慨 (角川スニーカー文庫)

SOS団のみんなが作中作を書くところは、なかなか好きだった。キョンのやつは、ちょっとナニな気がするけど。長門のやつが良い感じ。

ま、でも全体的には、そろそろ疲れが見えるような気も。

谷川流/涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)

明確な適役の登場で「お」とか思ったらあなた。この本では完結しないみたいね。

こういうことやると、余計にプレッシャーになって、グダグダになったりしないか心配。

うーん。

あとそういえば思い出したけど、若い女子のサンタのコスプレって謎だよね。他に「老人のコスプレ」ってないよね。やっぱこれは、コカコーラのカラーリングが秀逸ってことなのかな。と、思い出したので、この巻に関係なかったと思うけど書いてみた。

ついでに思い出したこと。

ウンチクが分かって嬉しいのは、ちょっと情けない。

鶴屋さんは、さすがにツライ。

キョンは成績悪いって設定のような気がするのにやたらペダンティックなのはなぜ。ハルヒは成績優秀で何でもこなすはずなのに絵が下手だったり肝心なときに物知らずだったりするのはなぜ。まあ、雑学ばっかり詳しくて成績悪いヤツっていたような気もするし、ある意味リアルかもね。

奥田英朗/東京物語 (集英社文庫)

自伝的小説かどうかは知らんけど、80年代の東京を舞台にした青春小説。

名古屋出身で東京に出てきて、というところで、ちょっと清水義範を思い出してみたりもする。

で。

まず、なんか当たり前なのだけど、自分が子供だったころに「青春」を送ってた人がいるんだよなあと、感慨深かった。つまり、いつでも、誰かが「青春」を送ってると。

この小説は、もう、ほんとうにものすごく良かった。というか趣味に合った。いままでほとんど思ったことのない、「これは自分のことを書いてるんじゃないのか」的な、そんな、女子中学生がミュージシャンに抱く気持ちのようなものまで抱いてしまったぐらい。なんだか自分的に痛い話も多かったような気がするし。そしてラストが、自分的に最も心の琴線に触れるネタである、ベルリンの壁崩壊だったし。

素晴らしかった。

単純に時系列に並んでないところが素敵ね。就職したての章の次に、上京の章。

ちょっと天狗になってたときに、社長やクライアントに叱られるシーンが、ものすごく良かったな。

奥田英朗/マドンナ (講談社文庫)

これまたものすごく良かった。

表題作の、日常にある小さな恋の話(サラリーマンが、新しく部下に来た女子をちょっと好きになってしまう)は、なんだか切なかったし、他の短編も、恋の話ではないけど、すれ違ったり、理解しあったり(誤解かもしれなくても)、なかなか刺さるものがあった。

が、中年サラリーマンが主人公の小説を読んでグっと来てて良いのだろうか。まあ僕は、中学生のころにビジネスマナーの本を読んでたような人なので、仕方ないか。ちなみに、いまは名刺の出し方すら自信がありません(ダメじゃん)。

奥田英朗/ガール

マドンナ (講談社文庫)の女子版。すなわち、バリキャリな人たちが主人公。これまたものすごく面白かった。

「おじさんと女の子で、会社は回っている」。

ただ、女子(特に本当にバリキャリな人)がこれ読んで、どう思うか知りたい気はする。だから30代の女子の知り合いに読んだ感想とか聞きたいんだけど、それを頼んだ時点でなんか怒られそうな気がして頼めない。うちの妻は「興味ない」っつって読んでくれんし・・・。

オチの付け方とかで、ちょっとワンパターン気味な感じもあったけど、ま、面白かったから良いかなあ。

マドンナ (講談社文庫)の逆パターン、つまり新人の男子社員に、ひとまわり上の女子社員が恋心を抱いてく話は、マドンナ (講談社文庫)との対比が、男子と女子の違いな感じで特に面白かった。

ところでマンションって、やっぱり買った方が良いのかなあ。ずっと賃貸派だったのだけど、最近いろいろ揺らいでるので自信なくなってきた。ま、金ないから買えないけど。

奥田英朗/サウスバウンド 上 (角川文庫 お 56-1)サウスバウンド 下 (角川文庫 お 56-2)

映画にもなった、お父さんは元過激派、という話。

スローライフ的なことに少し眉唾なので、「そんなにうまくはいかんだろ」みたいな気持ちはあるものの、かなり面白くて一気に読んだ。主人公が小6男子ってのも良かったのかも。

奥田英朗/町長選挙

トンデモ精神科医である伊良部シリーズ第3段。

相変わらず面白いのだけど、今回は、ナベツネホリエモンをあからさまにモデルにした話がそれぞれあり、ちょっと、ふたりとも感情移入しにくいので参った。

奥田英朗/ウランバーナの森

ジョンとうんこと幽霊の話。奥田節ではあるが、ちょっとまだ、いま一歩な感じではある(たしか小説家としてのデビュー作)。

奥田英朗/ララピポ

エロくて切なく哀しい人たちの連作短編集。面白かったけど、ネタ的にはちょっと苦手。でも、「オレはエロでもこんだけ書けるんだ」的気概は感じた。

奥田英朗/泳いで帰れ

何か適当に図書館で奥田英朗を借りたらエッセイだった。アテネオリンピックの日本代表野球チーム観戦記。

スポーツエッセイでもあり紀行文でもあり、最初、小説じゃないことに気がついたときは失敗と思ったが、なかなか楽しかった。

タイトルの意味がわかったときはちょっと笑った。

あ、そうか、小説じゃないからここに書くの変か。まいいや、小説だと思って読んじゃったし。

奥田英朗/B型陳情団

これまた小説かと思ったらエッセイだった。しかも結構昔の。バブルな臭いとかしつつ。つまりはバブル批判な感じもしつつ。辛口コラムみたいなニュアンスなんでしょうか。そんなに面白くはなかった。

小説家になる前もいろいろ原稿書いてたのは知らなかったので、へえと思った。

奥田英朗/真夜中のマーチ (集英社文庫)

最悪 (講談社文庫)とちょっと似てるのかな。

まあまあといったところ。

でもあの3人組は、なかなか楽しい3人組なので、続編とか出るとちょっと楽しいかも。

中島敦/李陵・山月記 (新潮文庫)

とりあえず、註がアレだった。なんというか、註って必要最低限で良いと思うのね。鑑賞するのに。研究用っぽい註は、やめてほしいよ。あと、註を付ける人が「オレは物知りだろ」的な感じの註も。

さておき。

山月記」、学生のころに教科書で読んだときは「は?」みたいな感じだったけど、年を取ったせいか、切なすぎる。

あとは沙悟浄が主人公の「悟浄出世」というのが良かった。西遊記モノが未完のものとしてあるらしく。完成してたら良かったのにね。

三崎亜記/となり町戦争 (集英社文庫)

公共事業としての戦争が、現実感希薄なまま薄っぺらに書かれるという、不条理演劇好きには、かなり素敵な設定。蛇足な部分がちょっと多かったような気がするけど、わりと面白かった。青年の主張みたいな部分は、いらんかったけど。

文庫版は「蛇足」として追加された章があったけど、これはちゃんと「蛇足」な感じだったので、蛇足とは感じなくて良かった。

バスジャックという本もあるようで、これもちょっと設定が面白そうなので読んでみる。

三崎亜記/バスジャック

読んでみた。

なぜか二階に扉を付けなきゃいけないと近隣の人に言われる話とか、バスジャックがブームになってる世の中の話とか、これまた不条理感があって楽しかった。となり町戦争は無駄に長かった気がするから、短編の方がこの人良いのかも。

ショートショートみたいなのもあって、まあベタだけど、良かった。

白岩玄/野ブタ。をプロデュース

いまっぽい感じの会話のラッシュ。それが本当のいまっぽさなのか、いまっぽく見える嘘なのかはよくわからん。

他人とは付かず離れず心地良い距離を取り、うまく仮面をつけることで人気者になると。で、そんな主人公が、転校して早速イジメられた信太君(野ブタ)をプロデュースして、人気者にしていくと。

まあ、こういう話だから、どこかでミイラ取りがミイラに的展開になると思ったが、やはりそういう感じで、ただ、わりと御都合主義的展開かなあとか思ったりはした。この部分だけじゃないけど。

でも、エンディングは、ちょっと予想外というか、「どう落とすかと思ったけど、そう落とすんだ」みたいな感じでした。

これ、ドラマでは堀北真希がやったんだよね。それってどうなんだろう。とか思いつつも、そのぐらい違う方が、どっちも楽しめて良いのかもしれんね。

玄侑宗久/中陰の花

現役の坊さんが書いた小説。

なんか幽霊的な話だったのでちょっと怖かった。夜読んだのもあって。トイレ行けないかと思った。いや、そんなに怖い話ではないけど。むしろなんというか、禅僧として、怪異とどう向き会うかみたいな、そんな話でしょうか。ものすごく面白かったとは思わないけど、ゆったりとした気分になる話だった。長い説教(怒る方の説教じゃなくて)みたいな?

しかし、この人の、仏教の話と最新物理学の話を絡ませるのは、あまり好きではない。たとえば、

「仏教での極楽浄土ってのは十万億土のかなたにあるって云うんだけどね、その距離を計算した人がいるんだ。それでその距離を四十九日かかって行きつく場合、どのくらいのスピードで行けば着けるのか、ってね」
「ほんま?」
「ああ。どのくらいのスピードだったと思う?」
「見当もつけへんわ」
「秒速三十万キロ」
「え」
「つまり光や電気と同じ速さ。一秒間に地球を七廻り半だよ」
「なんかきれいすぎるなあ」
「ええやん、綺麗なのは」

とか。作者としては、「だから仏教はすごい」という意味で書いてはいないけど、読む人はそう短絡しちゃったりするかもしれないしなあ。このあたりの態度は、文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)のおっちゃんが正しいと思うなあ。

輪廻の話は、なるほどと思ったけど。

小川洋子/ブラフマンの埋葬

本当にブラフマンを埋葬するのかと思ってたんで、そういう意味ではがっかり。

まあなんというか、水彩画のような感じで、良かったかなあ。

他人の写真を飾る人の話は、すごいなと思った。

筒井康隆/残像に口紅を (中公文庫)

どんどん文字(というか音)がなくなっていく小説。ちゃんと最後までやってて素晴しかった。

日本語だからできる小説かな。

松尾スズキ/宗教が往く

ガジェット的な部分でいろいろ生理的にダメなところが多かったけど、あやうく電車で吹き出しそうになったり、なかなか面白かった。

前書きみたいなやつで、今後「わたし」という一人称は使わないと出てきたけど、「作者」という言葉がちょろちょろ出てきてて、なんだそりゃと思った(一人称使ってるじゃん、ってこと)。まあ別にこんなルール守る必要はないと思うけど。

小道具が違うだけで、ライトノベルってこういうことかもなあと思った。

やっぱりデビュー作というのはネタがいっぱい入ってて楽しい。

ドストエフスキー(訳:江川卓)/罪と罰〈上〉 (岩波文庫)罪と罰〈中〉 (岩波文庫)罪と罰〈下〉 (岩波文庫)

なんだこりゃという感じと、なんだか感動したという感じがミックスされた、変な読後感。名作と言われるものを読んだあとに感じる、いままで鳴ってた嵐の音が急に消えたみたいな、そういう感じ。

個人的には、「ちぇっ!」じゃなくて「ちょっ!」だったのが、異常におかしかったです。